紙ができるまで


楮の栽培
楮(こうぞ)はクワ科の落葉樹で毎年株から出る枝を切り出してこれを紙の原料とします。
楮の繊維は太くて、長く(7~15ミリ)非常に強靭で繊維が絡み合う性質があるため、強度が要求される紙の代表的な原料です。

春には株から新芽が出はじめ、夏にはぐんぐんと背丈が伸びていきます。

この間に畑を耕し、草取り、幹から出た枝目を取る芽かきを行います。

こうして楮は冬までに3~4mに成長し、落葉を待って収穫をします。


トロロアオイの栽培
紙を漉くとき楮と一緒にトロロアオイの粘液を混ぜます。
トロロアオイはアオイ科の植物で別名ハナオクラと言います。
トロロアオイの根を叩いて、水に浸けておくと粘液が出てきます。
粘液は楮の繊維を接着させるためではなく、粘液が繊維を包み込み水中で分散させ絡みあわせないようにし、沈殿を防ぐために使います。
また紙を漉くときに簀から水が抜けるのを抑え厚さを調整するため、乾燥するときに紙同士をはがしやすくするためなど、
伝統的な紙作りにとってトロロアオイはとても重要です。


楮の皮むき
刈り取った楮を1mほどに切り、釜で蒸します。
蒸した楮の皮は熱いうちにむきます。
この状態の皮を「黒皮」といいます。


皮引き
黒皮には表皮、傷などがついています。
黒皮を水に浸して、包丁の刃などでこれらを削り取ります。
削り取り緑色部分を残したものを「なぜ皮」、緑色部分もすべて削り取ったものを「白皮」と呼びます。
皮引きを終えて乾かした楮の皮は、使うまで何年も保存しておくことができます。


皮を煮る
乾燥しておいた楮の皮を煮る前日に水に浸けて戻します。
釜の中に木灰液やソーダ灰を入れ、皮を入れてから柔らかくなるまで煮ます。
煮た後の皮は、水に晒してアク抜きを行います。


ちりより
水の中で1本1本、楮皮の傷や残っている表皮を取り除きます。
白い紙を作る場合はこの工程が重要になります。


叩解
叩解とはその名の通り叩きほぐすことです。
植物の繊維は叩解することで、柔らかくしなやかになります。
木槌または機械を使って繊維状にほぐしていきます。


紙漉き
漉き舟に水を張り、楮原料とトロロアオイの粘液を入れてよくかき混ぜます。
漉く紙が薄いほど粘液を増やして入れます。
竹ひごを絹糸で編んだ簀と桁を使ってすばやく組み込みます。
上下左右に揺すって厚さを決め、水を捨てます。
これは日本の紙漉きの特徴とされる流し漉きと呼ばれる漉きかたです。
漉いた紙は1枚ずつ積み重ねていきます。


圧搾
漉いた紙を重ねたものを紙床(しと)といいます。
この時点ではまだ水分を多く含んでいます。
これを一晩置いてから、時間をかけながら少しずつジャッキを使って水を絞ります。


乾燥
紙床から紙を1枚ずつ剥がし、乾燥を行います。
乾燥の方法はおもに板干し天日乾燥と鉄板乾燥の2種類があります。
板干し天日乾燥は、イチョウやマツなどの木の板に紙を1枚ずつ貼り、天日で乾燥します。
鉄板乾燥は、火を焚いて水を温めたりボイラーからお湯を送ることで乾燥面の温度を高めて、紙の乾燥を行います。
天気に左右されずに紙の乾燥を行える鉄板乾燥が現在では一般的です。


選別
1枚ずつ明かりにかざして、色味や厚さなどを選別していきます。


このような工程を経て出来上がる紙は、楮の原木に対してわずか4%ほどです。

また紙を漉くことはほんの1工程であり、楮を育てたり釜で煮たりと漉くことが出来る状態にするまでに多くの時間を要します。

それらは自然相手であり、四季の暮らしに寄り沿った仕事でもあります。


ここからは雪国ならではの紙づくりの工程を紹介します


雪ざらし
楮の白皮を雪の上に並べてアクを抜き、天日で白くなる雪国ならではの方法です。
こうすることで太陽からの紫外線により、色素が抜けて白くなります。雪の上に置くことで紫外線を反射すること、雪が溶ける際に雪が色素を抜いてくれたりと晒しを効果的に行います。
かつては藁や着物の反物も同様に雪ざらしが行われていました。
かんぐれ
冬期間、漉き重ねた紙床を、雪の穴の中に埋めて保存する方法です。
今は冬時期でも乾燥を行うこともできますが、かつて冬の間は晴れ間がないため外で紙を干すことができませんでした。また昔は鉄板乾燥を行うにも薪や灯油はとても貴重でした。
そのため、このように冬の間は雪の中に紙床を保存をしておきました。
そして雪が振り止まり、晴れ間が見え始めた頃に掘り出して板干し天日乾燥を行います。
今でも特別な紙はこのような工程を経て紙になります。